色々あって此処

焦って不安になるけれど、笑えることはあるものです

15歳の会話術

30年近く前の事。高校1年の時のはなし。

私の通った高校は私服だったのでみんな好きな服装をしていた。

ファッションが自己主張の一つだった子、全然興味のない子、どちらでもない子、色んな子がいて校内がカラフルだった。

田舎の中学出身で、ド定番デザインのセーラー服とダサいジャージがワードローブだった私にはけっこうな衝撃だ。

 

そりゃあ、お洒落したくもなる。

 

ある日私はオレンジのチェックのワンピースを着て髪をアップに結んでいた。

今思うと何とも田舎臭さ溢れるファッションだったけど、当時はイケてると思ってジーンズショップ、その名もウイリーウイリーで選んだ服だった。

そしてクラスメイトのIちゃんが、けっこうなテンションで

「えー、かわいいね~!」と褒めてくれた。

私はそれまで友達に褒められた時には謙遜するのがマナーだ思っていたので

「いやあ…そんなことないよぉ」と15歳なりの返事をした。

目立ち過ぎない事、自慢しない事が私が中学時代に身に着けたスキルだった。

 

私の後ろの席には、N君が居た。

N君はスクールカースト上位の男で

眩しいの事は「まぶい」って言うし、

入学してすぐ退学したイケメンの子とも友達だったし、

オザキのファンだし、ギターも上手いらしいし、

朝シャワーを浴びたら自分の口が臭くて仰天したとか笑いながら言うし、

なんていうか、ちょっと刺激強めな相手だった。

 

そしてその会話を聞いていたN君が後から私に言ってきた。

 

「おまえは自分でかわいくないと思っている服を着ているのか?」と。

ひいー!何?聞いてたの!?

 

「そういう時はありがとうって言うんだ」

 

そうN君に言われた時、とても恥ずかしくなった。

感謝をすれば良いだけだったのに、なんてめんどうな返事だったんだ。

 

考えたらとても普通の事なんだけど。

それ以来私は「褒められたらありがとう」と世渡りマニュアルを書き換えた。

N君には感謝している。

 

N君はその後も私のお気楽高校生活に現れては、度々スパイスをくれた。

最後は有言実行で、短期間の猛勉強ののち難しい大学に受かっていった。

 

高校時代に少しだけ付き合ったけど、

私が勉強に集中したいと言って別れた。

本当は、何でも見透かされている気がして居心地に耐えられなくなったせいだった。

 

卒業前には

「勉強したいといったお前は浪人して、俺は受かったぞ」と言われて

参りました、と思ったのを覚えている。

最近妙に思い出すのは、通信制の大学のレポートに挫折しそうだからだろう。

 

噂では、彼は好きだった音楽を諦めずに東京で音楽の仕事で成功しているらしい。

さすがである。

 

頑張ろう。